新人公演/平野智美/ミステリアス

さて明後日は新人公演である。真野スマ@渋谷が予想以上の高騰をみせる一方、新人公演は1000円で入場できてしまう。
僕は基本的に地下アイドルが嫌いである。といってもかつて地下アイドルの代名詞だったAKB48はすっかり(現在日本でトップクラスの)メジャーアイドルであるし、ハロプロも握手会を連発するようになり、何をもって地下アイドルなのかという定義は難しいが、プロフェッショナルであること・現実世界と切り離されている度合いが高いことなどが、地下アイドルの対義語であるメジャーアイドルの条件とも言えようか。


さて、ハロプロエッグである。ハロプロと名はつくものの、デビュー前の研修生の集まりであり、先に述べた定義的にもファン層的にも地下アイドルと言って差し支えないだろう*1

ハロプロエッグ内にも、5月にデビューを控え今回でエッグを卒業予定の和田彩花前田憂佳福田花音小川紗季からなるスマイレージをはじめ、かつてMilkyWayとして久住小春とともに活躍した吉川友北原沙弥香しゅごキャラエッグとして活躍しつつも惜しくもスマイレージ入りを逃した佐保明梨など、ハロプロの中でも歌唱力・ダンス・ビジュアル面どれをとっても研修生の域を脱していると思われる実力派アイドルは揃っている。もちろん彼女たちのパフォーマンスを楽しみにしている*2
今名前を挙げたアイドル達は皆、なんとも形容し難いオーラ、「華」を持っている。ステージ上に何人ものアイドルが踊っていても、自然と目が行く存在である。おそらくメジャーアイドルとはそういう存在なのだろう。


しかし、ハロプロエッグの中で、僕が今名前を挙げなかったがなぜか気になるメンバーがいる。平野智美である。
簡単に平野智美のプロフィールを挙げると、1984年1月27日生まれの26歳。なんと現在大学院生である。2009年6月の新人公演にてハロプロエッグ加入が発表された。

年齢、そして大学院生という経歴だけでも、(ロリぞろいのハロプロにあって)驚きである。ビジュアルはかなりの童顔、愛嬌の無い嗣永桃子とでも形容できようか*3。そしてミステリアスなのは経歴だけではない。平野智美ことひらっち、とにかく笑わない。アイドルなのに全く笑わない。笑わないアイドルと言うと誰しもがwinkを思い出すが、winkと違って美少女というわけでも(失礼)そもそも少女ですらない。
おそらく歌唱力が抜群なわけでもない。そもそもMCでも殆ど喋らないので僕は声すら把握していない。ダンスも特別優れているわけでもない。
院生だけあって、おそらく頭は良いだろう。前回の新人公演でも大喜利で「Yes, we can」という社会派ネタ(?)を挙げていた。しかしその場にいたその他のエッグメンのほぼ全員がそれが何のネタなのか理解していなかったように、アイドルというものは頭が悪いと相場が決まっているし、それがアイドル戦略的にも正統派であるのだ。
ステージの上にいても、こっちが探さないと、見失ってしまう。はっきり言って、先に述べたメジャーアイドルとしての存在感・華に欠けているのだ。なにもかもがアイドルらしくない。年齢という前提条件さえ満たしていない。それが平野智美である。


しかし、僕は平野智美がアイドル失格であると言いたいのではない。僕は平野智美が気になっている。新人公演やハロコンに行くと、つい平野智美を探してしまう。逆説的だが、ファンの目線をどういう形であれ獲得している時点で、平野智美は立派なアイドルなのだ。

アイドルとはなんなのか。思うに、アイドルとはファンとアイドル自身の共同幻想で生み出されるものである。もっと詳しく言うと、作り手・プロデューサーによる演出(構造)、アイドル本人の身体が生み出す魅力(萌え)、ファンのアイドルに対する目線そして幻想(物語)、この構造・萌え・物語の3要素が複雑にからみ合って、アイドルという存在が、id:onoyaさんの用語を借りれば「アイドル現象」が成立しているのではないか*4


ハロープロジェクトに所属していればアイドルである。それは正しい。そしてファンが彼女はアイドルであると認めればアイドルである。これも正しい。平野智美に対して、自分を含むファンたちはしばしば「ひらっちは大学院でアイドルを研究するためにアイドルになったのでは?」「アップフロントの幹部候補で、今はアイドル兼アイドル保育係として経験を積ませてるのでは?」「いや単純にエッグの家庭教師なんじゃね?」などという妄想を炸裂させたりする。つまり、彼女は立派にファンのアイドル幻想の対象となっている。


僕は基本的にはアイドルと一定の距離を置きたいと思っているタイプのファンである。握手会にはできれば行きたくないし、実生活の様子など必要以上に知りたくはない。いや、本当は知りたい欲望はあるのだが、知ってしまったらきっと後悔するとわかっている。アイドルも人間だし、どこまで自分を他人にプロデュースするのか、どのような面を見せて相手から好かれるのかという、現実世界で皆が行っているペルソナゲームを限りなく突き詰めたのがアイドルである、ということもできるだろう。


しかし、平野智美とは会話をしてみたい。今のところ、そう思っている唯一のアイドルである。
なぜあなたは「アイドル」になろうとおもったのですか?と。


3月5日のエントリにも述べたように、アイドルとは「cool」なもの、未知へのあこがれ・フェティシズムである。
ひらっち、なんてクールでなんてアイドル的なんだろう!!*5


参考URL:ひらっちについて
http://www.machineworks.co.uk/whg/2010/03/post_7199.html

*1:プレアイドルと地下アイドルは厳密には異なるが、ここではその点については深入りしないことにする

*2:それ以外で注目しているのは新アミュレットハート・団地妻の中学一年生こと譜久村聖くらいか

*3:それって結構ひどいよね笑

*4:メディアの力も大きい。メディアは作り手(構造)の機能に含まれるだろう。3要素が絡みあうと言うより、アイドルとファンという対立する2項の底に構造としての要素があり、アイドルに対して演出を行い、ファンに対してメディアによる戦略を仕掛けている、と図式化することも可能である。この構造についてはいずれ詳しく考察したい。というかアイドル論とは「アイドルとは何か」という終りの無い命題について考え続ける作業ともいえるが。ちなみに構造/萌え/物語という3点用語は、使用された文脈とは異なるものの、当ブログでも感想を載せた東工大のシンポジウムに関して、2010年3月8日にpostされた東浩紀氏のツイートよりヒントを得た。個人的に「萌え」という用語に強い抵抗があるので、「セクシュアリティ」に変更しようかとも考えたが、まだ「萌え」の方がアイドルの身体性を表す際に「セクシュアリティ」より妥当性のある語感をもつと判断しやむを得ず「萌え」という用語を使用している。いづれぴったりくる他の用語に置き換えたい

*5:3月27日新人公演、きっと僕の目線はステージのひらっちを追っているはずだ