うみねこのなく頃に episode6 感想

試験も終わってはや1ヶ月、そういえばまだ未プレイだったのを思い出して久々にゲームをプレイ。

ネタバレに敏感であろうゲームなので、隠しておきます。

今回ep6を終えて、自分の中での「うみねこのなく頃に」に対する姿勢における一番の変化は、各話共通の「真犯人」はおそらく存在しないだろうという気づきと、メタ世界におけるゲームマスターの重要性が今まで思っていた以上に大きく「うみねこ」の本質的にかかわる問題だという気づき。

赤文字が出現したep2から、うみねこはメタ本格ミステリであり、「魔法」というファンタジー概念でカモフラージュされた物語の中からいわゆる本格ミステリでの「ルール」に反さずに説明可能な「真実」を見つけるゲームなのだなと理解していた。地の文、いわゆる登場人物の「主観」の記述はいくらでも疑うことができ(初期の生きている金蔵、魔法バトルなどがその主たる例)、信じられるのは赤文字だけ、そしてその赤文字に巧妙に仕掛けられた叙述トリックを突破し、クローズドサークルの中で「真犯人」をあぶり出す「ミステリ」作品、それがうみねこだと。またep5で「ノックスの十戒」なるキーワードも登場し、自分の認識が正しかったことを再確認したりもした。
ちなみにep4までは、登場人物の中で唯一魔法をまったく信じていない戦人の主観は信じられると仮定し((補足:ep5において赤文字でep1〜ep4において戦人は事件に"直接的には"影響を及ぼさない探偵だったことが示された))、ep2で赤文字をかいくぐり明らかに死亡していない嘉音に目をつけ、うみねこwikiにもある紗音=嘉音同一人物説を基本路線に考えていたのだが、ep5において戦人の主観も絶対ではないという至極当然なことに気づき*1ベアトリーチェが消滅?ゲームマスターが戦人に?なんじゃらほいそれ下位世界(六軒島での出来事)に関係あるんですか?という程度の認識でep6に手を付けた。


プレイ中に気になったシーン。
度々挿入されるチェーンロックと首輪の二重のロックにより暗い部屋から出ることの出来ないシーン、そこでの主観は誰だか示されないわけですが、第一印象では嘉音っぽいなという印象。戦人の可能性もありそう。
客間の密室では、伏線となるバスルームの排水口の記述で、実際に起きたバラバラ殺人で死体を排水口から流したという容疑者の供述を思い出しいやーな予感がしたのだが、まさか後にしっかり探偵エリカが戦人を追い詰める際にその方法を迫ってくるとは。あのシーンがep6での個人的ベストシーン。


さて、エンジェの世界で六軒島での物語が記されたとされるボトルメールを偽造する作家が登場し、メタ世界でもゲームマスターについて語られた様々な会話から、うみねこの大きな構造にようやく*2気づくことができた。それは、うみねこの各エピソードはそれぞれのゲームマスターの主観、つまりゲームマスターが考える「真実」が記述されているということ。


今までうみねこでは「真実と主観」の関係はずっとモチーフにされ続けてきた。客観的に見たら簡単なトリックでも、信じる者にとっては魔法となる。幻想を見ているだけかもしれないが、見ている本人にとってはそれは真実となる。自分では実生活においてもこのテーマについてよく考えることが多く、痛いほど理解していたつもりだったのだが、そのテーマが作品中の細かいエピソードに留まらず、物語構造全体においても言えることだということにep6まで気づいていなかった。ep1からep4(出題編)まで共通の「真犯人」、あるいはゲーム全体を貫く「真実」などおそらく存在しないのだろう。
さんざん作中でも言及されるように、うみねこTRPGである。共通、そして絶対の「初期配置」があり、あとは自由にゲームマスターがシナリオを作って良い。ロジックエラーに陥らない範囲で。
絶対の初期配置はおそらく、登場人物(18人、ep6で新たに示された17人ルール)と、第10の晩まで殺人が発生すること。その二つくらいなのだろう。


と、うみねこ全体について大きな気づきがあったところで、作中でもあからさまに本格ミステリ的「読者への挑戦」が投じられていたので、様々な謎について頑張って考えてみた。

まず気になるのは、今までややトンデモ説だと思われていた紗音=嘉音同一人物説が、限りなく正解に近いですよ〜という描写が続くこと。ここまであからさまに書かれると逆に疑いたくなるのが竜騎士読者ってものでしょう。ラストで示された人数的にも紗音と嘉音合わせて1人とすると確かに17人となるけれど・・・とここまで考え、嘉音と戦人の密室抜け入れ替わりや、前述の首輪&チェーンロックから抜け出せない描写の主観が嘉音っぽいという第一印象から、紗音と嘉音は別人物で、戦人と嘉音の名前入れ替わりが発生したのでは?と予想。戦人は明日夢の実の息子ではないらしいし、ep4の戦人に関する赤文字からも戦人=嘉音は結構行けそう。ep6の密室関連で示された赤文字は、「○○人」「○○体」といった人間の数え方や呼び方がかなり曖昧で赤を抜ける論理は少々こじつけなら割と簡単に作れる。
そうすると問題なのは最後の「エリカを入れても17人」だが、メタ世界でのエリカとベルンカステルとの会話から、エリカはep6では水死体となって六軒島にたどり着いており人数には含まれないよ下位世界のエリカ関連の記述は全部幻想だよ説でクリア可能だろう。あるいは嘉音が始めから死んでいるか。もしかすると、どちらかが真実というわけでもなく、人数のルールさえ守ればエピソードごとに嘉音が死んでいるか否かが変わってくるのかもしれない、その可能性を肯定できるのがうみねこの物語構造なのかもしれない。



というところまで考えてギブアップ、耐えきれずにうみねこwikiをチェック。大体同じような説が有力説としてすでに議論されている模様。
じつは今までトリック考察以外はあまりwikiをチェックしていなかったのだが、今回初めて各項目までしっかり読み込んでみると、物語構造自体に関して今回自分が気づいたことは作者が既に言及しているようで*3、ほぼ前提となっていたらしい。完全に乗り遅れてるなぁとも思ったが、ゲーム中に自分で気付けたということで良しとしようかな、と思い込むことにする。


登場人物の恋とか魔法バトルとか正直どうでもいいわと思っていた典型的アンチファンタジー読者であった自分を反省しつつ、EP7を待ちたいと思います。ではでは。

*1:主人公を根拠なしに特別扱いするのはおかしいですよね^^ いかに自らの前提・先入観を相対化出来るかがうみねことでの勝負!

*2:なんでep6まで気がつかなかったのか不思議。頭悪いなぁ自分、とほとほと感じた

*3:アンチファンタジー、アンチミステリについて、コミケで小冊子が配布されたのだとか。