2014/1/3 Hello! Project 2014 WINTER / 勝田里奈さんと自己承認について

3年ぶりにハロコンに入りました。

このブログでも3年前まではよくハロコンや新人公演のことを書いていたのですが、2010年末のエッグ解体をきっかけに、ハロプロを直視できなくなってしまい、主にエッグを見に行く場所だったハロコンにもすっかり足を運ぶことがなくなってしまいました。

結果的には、大好きだったエッグ達の中から、きっかこと吉川友が『きっかけはYOU』で華々しくデビューし、譜久村聖工藤遥モーニング娘。に、竹内朱莉勝田里奈スマイレージに加入。実力派の年長組もアップアップガールズ(仮)として名を上げ、その他多くのメンバーが各所で活躍しています。アイドルの下部組織としては(ちゃんと何かと比較したわけではないですが)、驚くほど多くのメンバーがスポットライトを浴びる場所にいるのではないでしょうか。とはいっても、大好きだったエッグの中でも一番心を奪われていた存在だった、ひらっちこと平野智美さんは当然のように表舞台からはひゅるりと姿を消してしまいましたが。
そして、そんな彼女たちを真剣に追いかけるでもなく、どこか心に棘が刺さったまま、ハロプロ以外のアイドルや地下アイドル、地方アイドルを見に行く日々が続いていました。

2011年以降、楽しくもどこか鬱屈した日々に終止符を打つきっかけとなったのが、Juice=Juiceのデビュー、いや、宮本佳林ちゃんのデビューでした。それまでの間、多くの人々に実力を認められながら長らくデビューのきっかけがなかった彼女に、いつしか自分は「実力はあるのにどこか不遇」な存在としてのエッグの姿を重ねるようになり、いろいろな意味で佳林ちゃんはエッグの象徴であると思い込んでいくようになっていたのでした。そんな佳林ちゃんがデビューすることは楽しみでもあり、それ以上に不安でもありましたが、2013年5月に行われた日比谷野音ハロプロフェスが何もかも素晴らしく、それをきっかけにJ=J現場に足を運ぶようになり、2014年はこれまで刺さっていた棘の痛みを感じること無くハロプロに戻ってこれそうな予感がしていました*1

そのような期待をふくらませて参加した2014年の正月ハロコンは、予想をはるかに超える楽しさと幸せに包まれたものでした。佳林ちゃん率いるJuice=Juiceはもちろんのこと、昼公演のシャッフルコンこと【DE-HA MiX】では、熊井ちゃん通学ベクトルの意外性に笑ったり、田村めいめい&佐藤まーちゃんのロボキッスにしびれたり、夜公演のユニットコン【GOiSU MODE】では、頭を抱えるしかないことが多かった過去のものとは一線を画したかっちょいいメドレーで繋がれた、ここ数年でファンになった人々を明確にターゲットにした選曲により攻撃的に仕上がった公演に感心しながら、音楽に合わせ自然と体が動き、色々と楽しむことができました。


しかし、なにより素晴らしかったのは、夜公演の【GOiSU MODE】の日替わりソロ曲コーナーで披露された、スマイレージのかったりーなこと勝田里奈さんの『My Days for You』でした。

かったりーなは不思議なアイドルです。もうすっかりハロプロについて言及していないので、過去に自分が彼女のことをどう評していたっけ、とおもって過去エントリを検索したところ、「ツインテールがトレードマーク、結構目立つ。踊りは下手だが、笑顔が目を引く。何がいいのかわからないけど、なんかいい。」という記述がありました。

過去エントリ:Hello!Project 2010 SUMMER 〜ファンコラ!〜@中野サンプラザ 8/7夜 平野智美とエッグ観察日記
http://d.hatena.ne.jp/nhokuto/20100807/1281201023

「なんかいい」とは自分ながらよく言ったもので(別に何も言ってないですが)、この「なんかよさ」は今のかったりーなにもそのまま当てはまる良さだと感じているものです。もちろん、「ばくわらさん」という二つ名を巡るキャラクターの読み込みも個人的に大好きなのですが、それだけには収まらない、ほわほわとした暖かみ*2や、サラリと出るキツイ一言、しかしその全てが許されるわけではないが「流される」ようなつかみ所のなさが愛おしくてたまらないアイドルです。完全に余談ですが、干支一回り以上年上のひらっちとエッグ同期で、ととても仲が良さそうだったのが今でも忘れられません。

かったりーながステージの上での実力面で評価されることはあまり多くないかもしれません。どちらかというと、ステージの上でもダンスや歌という要素よりもついついファンにキャラクターの読み込みに夢中にさせてしまう、そんなメンバーだと勝手に思っています。今日のハロコンでも、時たまどこかやる気がなさそうに思えてしまうような踊りで、シャッフルユニットの立ち位置も右端でソロパートも1箇所だけ。出番以外の時にステージの左右に設置された階段で各メンバーが「GOiSU/DE-HA」を意識するよういわれているのか必要以上にギラギラと腰をくねらせ肘を上げて髪をかきあげ「魅せ」る中、かったりーなはふらふらと不思議な動きをしながら、時には前段にいた中西香菜の動きを笑ったりしていました。

しかし、夜公演のソロコーナー、工藤遥に続いて姿をみせたのは、そんなかったりーなでした。真野恵里菜の名曲、『My Days for You』のイントロが流れ、「止まらない思い 受け止めて」そう歌い始めるかったりーなの姿、スクリーンに映る「My Days for You 勝田里奈」の文字に心拍数が跳ね上がりました。
『My Days for You』は本当に素晴らしい曲です。しかし、同時に歌い手を選ぶ曲でもあるように思います。アイドルであると同時に、女優としてステップアップしてきた真野ちゃんが、アイドルとしてのキャリアの後半で与えられた、20歳を記念した歌です。また、東日本大震災後に発売された曲でもあり、“二十歳の彼女なら説得力があるものになる”という判断の末に出来上がったものであるといわれています*3
かったりーなが真野ちゃんに匹敵するほどの高い表現力を持ち合わせていると言いたいのではありません。ただ、この曲を歌うためには、高い歌唱力といったある程度客観的に判断できる能力よりも、それこそ「なんともいえない良さ」や、聴くものをあたたかい気持ちにさせてくれるような声質、そのような天性のものが必要なのではないかと思っています。そして、かったりーなには、それがありました*4

客席がかったりーなのイメージカラーである黄色一面に染まり、My Days for Youを歌い上げた数分間、本当に幸せな瞬間でした。

再びハロに足を運ぶきっかけとなった佳林ちゃんは、よくわからないエッグへのこじれた思いを浄化してくれて、これからの未来を見ていたい、未来へ連れて行ってくれる、そう思わせてくれる存在です。しかし、かったりーなは、自分の中でまたちょっと違ったところにいるようです。あのエッグ時代が今の彼女につながっている、そして自分自身も、現実を生きる中で、あのエッグを見ていた頃があるから今がある。かったりーなを肯定してあげることで、自分自身を肯定できる。アイドルとは何なのか、「他人」とはなんなのか、そんな深い問いに繋がってしまいそうですが、かったりーなには常に自分を重ねてきてしまいました。そんなかったりーなから、「いつも見ててくれたりがとう 支えてくれていてありがとう 止まらないこの思い受け止めて これからもどうぞよろしくね」と歌われ、勝手に自分を重ねて肯定してきた彼女が、それを受け入れてくれている、そして逆に自分を祝福してくれる*5、そんな幸福が新年早々訪れてしまったのです。

誰しも、承認欲求というものを持っていることでしょう。昨今では特に承認欲求と上手く付き合えるかどうかという点が現代社会においてクローズアップされることが多いように思います。アイドルと承認を巡る問題について、ここで特定のアイドルから自分が承認されるのかという他者承認のレベルで悩んでしまうと、終わりの見えないところへ落ちてしまうのでしょう。
しかし、自分が自分を受け入れられるのか、赦せるのかという自己承認のレベルにおいて、自己の中に生み出された、超越的*6な存在としてのアイドルが自分を肯定してくれる、他者でありながら自己承認の担い手である、自己を越えた他者なのか、自己と混ざり合った他者なのかよくわからないけれど、少なくとも彼女がいるから自分が生きていけるんだと思う瞬間があります。それは、全てが頭のなかで解決してしまいような、もうほとんど妄想と変わらない状態かもしれませんが、それでも、ステージで歌うアイドルによってその状態が生み出されること、そして、アイドル(というまぎれもない他者)が存在することそれ自体は、やはり素晴らしいことだと思うのです。


2014年も、今日のような夢の時間がまたいつか訪れる場所を追いかけてみたいと思います。


*1:この辺りのエッグへの思いについては、What is Idol?というアイドルミニコミに寄稿させて頂く機会があったのですが、すっかり告知をするのを忘れていました。 What is Idol? vol.9 http://whatisidol.jimdo.com/2013/08/09/what-is-idol-vol-9-%E5%86%85%E5%AE%B9%E7%B4%B9%E4%BB%8B%E3%81%9D%E3%81%AE2/

*2:スマイレージ時代に「ばくわら」や「いつめん」がネタになる以前、新人公演日記を最も多く更新していたのは彼女でした

*3:参考:南波一海 presents ヒロインたちのうた。〜アイドル・ソングのキーパーソンを直撃!〜第15回:NOBE http://www.cdjournal.com/main/special/song_of_the_heroines/645/15

*4:かったりーなには歌唱力が無いと言いたげな文章になってしまいましたが、決してそのようなことはないと思います。低音は少し辛そうでしたが、サビの高音はとても綺麗で、特徴のある歌声が心地よかったです

*5:もうここまでくると何を言っているのかわかりませんが、正確には平野智美が自分自身であり、かったりーなはエッグ同期として精神的共同体なのです。はい。

*6:不勉強なのでこのあたりの用語が正式な用法なのかわかりません