アイドル領域vol.6 アイドルとフラッシュ・モブの可能性

2013年12月31日、コミックマーケット85の3日目にて頒布される『アイドル領域 vol.6』に、「アイドルとフラッシュ・モブの可能性」という論考を寄稿しました。



コミックマーケット85
期日:12月31日(火)10〜16時
場所:東京ビッグサイト
ブース:西ほ−35b
サークル名:ムスメラウンジ
『アイドル領域Vol.6』(新刊)
(全108頁、価格:1000円)

ここ数年のアイドルブームの盛り上がりは今更指摘するまでもなく(という出だしで始まる文章を書くのが嫌になるくらいに)、また、それに呼応するように、アイドルを論じる文章を様々な媒体で目にする機会も非常に増えました。
アイドル"を"論じる、といってもその在り方は多種多様です。「アイドル論」なるジャンルは、未だ成熟しているとはいえず、様々な学問や、蓄積のある他ジャンルにおける論の型を使って、アイドルを語る、あるいはアイドルを使って社会を語るパターンが多く見られます。
例えばアイドル論の良きお手本となるであろう、文芸評論の中にある大きなテーマ、「社会と文学」あるいは「政治と文学」にそってアイドルを考えた場合、資本主義・現代情報社会の申し子であるアイドルは、社会(あるいは政治)を語るのにもってこいの題材となります。社会学や経済学については、いうまでもないでしょう。
また、アイドルを語るというとき、個別のアイドルそのものに強くフォーカスをあてるパターンと、ファンや運営を含んだアイドル現象を俯瞰で語るパターンに大きく分類できます。その中でも、アイドル現象については、アイドルそのものよりもその受け手である「アイドルヲタク」の行動様式が非常に特徴的なため、語りを生む大きな原動力になっている印象があります。
特に、ここ数年ではAKB48の「総選挙」がマスメディアでも取り上げられ、アイドル現象の象徴となっていたために、「アイドルと社会」、あるいは「アイドルと政治」に関する多くの語りを生み出しました。その語りの多くが、AKB総選挙に象徴されるアイドル現象を馬鹿らしいものと捉える一方で、一部の語り手からは、人々を動員する力というアイドルの可能性を見出し、これを肯定的に捉えるような視点での語りも登場しました。
参考:
初音ミク出馬せよ、について
http://d.hatena.ne.jp/nhokuto/20091213/1260722698
AKB48選抜総選挙/アイドルの公共性
http://d.hatena.ne.jp/nhokuto/20120606/1339006616

個人的には、アイドル現象そのものについての考察の蓄積が無いままに、その表面だけを見て(いるように思われてしまう程度のレベルで)アイドルと政治を接続して語ることは、"アイドル論"そのもののレベルの低さが露呈してしまうという観点から危惧の念を抱いていました。
しかし、その危惧は、AKB総選挙の盛り上がりも、それに対する反応や語りも一過性のものに過ぎなかったという、それはそれで失望するような理由で、杞憂に終わろうとしています。
恥ずかしいようですが、それでも自分は、アイドル現象には、何かしらの「可能性」があると漠然と信じています。だからこそ、それを安易にぶちあげて政治を語ってしまうような風潮に、懸念を抱いていたのです。

すこし話が飛びますが、自分には、何かしらの(政治的)可能性があるようで、しかしそれを政治に直に接続して語ることの危うさを感じていた現象があります。それが、フラッシュ・モブです。2011年に発生した東日本大震災及び原発事故以後、反原発のデモが象徴するように、人々の連帯の新しい形がクローズアップされることが増えました。一方で、そこに「新しい可能性がある」と断言することの難しさも、多くの人が同様に抱えているのではないでしょうか。

そういった状況で、アイドルやフラッシュ・モブ(あるいはデモ)をそのまま並列に語ることの欲望と同時に、危惧を抱いているというフラストレーションを常々抱えていました。しかし、非常に個人的な話ですが、今年から社会人として働くということが、改めてこのテーマにチャレンジしてみようと思うきっかけになったのかもしれません。ただし、これらの社会的意義と可能性を語るには、時間も知識も圧倒的に足りません。そこで、辛うじて自分にできること、それは、あくまで「アイドル論」という枠組みの中にとどまるという甘えあるいは制約の下で、「アイドルとフラッシュ・モブの可能性」について、その「楽しさ」にフォーカスを当てることで、それらの社会的意義を語る上での最低限の下地について、何か示唆を示すことではないかという思いから、本論考を執筆しました。

前置きが非常に長くなってしまいましたが、本論考を呼んでくださった方々には、できるだけアイドルとフラッシュ・モブの「楽しさ」が伝わると良いなと思っています。自分の悪い癖ですが、「読みやすさ」に欠ける文章であるのは、反省しなければなりませんが。

多忙さと、貴重な土日をアイドル現場に足を運ぶために使いたいという思いから、ブログの更新も長く途絶えてしまいましたが、『アイドル領域 vol.6』への寄稿をきっかけに、また色々と思ったことを書いていければ良いなと思っておりますので、今後もよろしくお願い致します。