真野恵里菜 8thシングル「元気者で行こう!」「家に帰ろう」/ 真野絵里菜の帰る場所

元気者で行こう!(初回生産限定盤A)

元気者で行こう!(初回生産限定盤A)

めずらしく楽曲についてのエントリ。
真野恵里菜8thシングル、「元気者で行こう!」。最初期の弾き語りスタイルから定番アイドルポップス系→(つんくお得意の)マイナー調ダンスミュージックときて、またガラッと方針を転換した真野ちゃん。タイトル通り、「元気」がキーワードの応援ソングである。
最近僕は真野恵里菜のことを「優等生アイドル」と形容することが多いが、おそらく真野ちゃんのことを知る方であればそれなりに納得してもらえるだろう。歌は下手だが独特の味があり、ダンスもそれなりに踊れるがなんだか笑える。当初は80年代風の正統派アイドル路線だったが、それ以外のスタイルもこなせる。優しそうでファン思いで、ブログやtwitterの更新もマメに行い、実に健気。頭もそれなりによさそう。そんなハロプロ現役メンバーで唯一のソロアイドルである。
しかし、先日のエントリhttp://d.hatena.ne.jp/nhokuto/20100917/1284742755でも書いたように、その優等生的な仮面の下には、もろく不安定な影が隠されているように思えてならない。俗な言葉でいうと、メンヘラチックな要素がちらりちらりと危うく揺らめく、そんなバランスが真野ちゃんの魅力であると勝手に想像している。

そんな真野恵里菜が歌う、「元気者で行こう!」である。PV撮影に堤幸彦監督を起用するなど、攻めの姿勢がうかがえる。しかし、なぜ「元気者で行こう!」なのだろうか。真野ちゃんに上述のようなイメージを持つ自分にとっては、この歌によって真野ちゃんに元気を貰うのではなく、こんな空元気な歌を歌わされてせめて俺たちが元気にならなかったらたぶん真野ちゃんおかしくなっちゃいそうだし可哀想だからしょうがない元気になってあげよう、それより真野ちゃんが元気出してね、という曲であるように感じてしまうのだ。
ダンス部分でこそエッグメンバー4人を従えて元気いっぱいに踊る真野ちゃんであるが、映像部分では、真野ちゃん=「元気者」ではない。赤タイツに身を包んだ情けない顔のオヤジがなぜか「元気者」を象徴するキャラクターであり、それを真野ちゃんがムチでばしばし殴りながら間接的に疲れたサラリーマン=我々を殴ることで闘魂を与え、我々は元気者になる。しかしよく見てみると、真野ちゃん&元気者はサラリーマン=現実世界の我々が怪しげな「元気者ドリンク」を飲むことで出現している。そう、単にこれ怪しいオクスリによる幻覚でしかないのだ。なんて悲しい。。しかも現実世界の我々は、幻想の中で真野ちゃんに闘魂を入れてもらうことすらできない。なぜか「元気者」=幻想内の自分に頬を叩かれるのである。元気は自分で出すしかない、私は幻想内の元気者=あんたに鞭を叩くしかできないのよ!というSっ気満々の真野ちゃんの声が聞こえてくる。そう、真野ちゃんの半公式裏設定*1としての「説教キャラ」に通ずるナイスキャラクターである。堤監督、やりおる。

さて、Sっ気満々の真野ちゃんに(望み通り)突き放されてしまった我々であるが、じゃあ真野ちゃんはどうするのか。空元気で、半公式Sキャラを演じきった後、「本当は」(笑)傷つきやすくてさみしがりやで情緒不安定な真野ちゃんはどうなってしまうのか。我々のストレスを吹き飛ばしてくれたのはいいが、アイドル界という特殊な世界に生きる真野ちゃんが一番わかっているであろう、世の中の不条理や「タテマエ」まで一緒に吹き飛ばしてしまったら、丸裸の真野ちゃんはどうなってしまうのだろうか!?


その答えはカップリング曲の「家に帰ろう」にある。

不条理が渦巻くタテマエの世界で戦い努力してきた真野ちゃんは、ついにその孤独な戦いに疲れてしまった。目を閉じれば浮かぶ、かつての日々。そして聞こえてくる「泣いてた私のことを呼んでいたあの声」。確かに残るそのファンの声援を確かに胸に残し、真野ちゃんは家に帰る。

Going home!
どこから来て どこへ行くの
生まれた場所を探して
誰かその答えを知っているの?
願いをささやきながら
つばさ広げて 大空
家へ帰ろうよ、、、


我々が真野ちゃんの鞭と元気ドリンクによってなんとか現実を生きている一方、真野ちゃんは傷ついていた。ボロボロだった。一人だった。真野ちゃんはやり直すための家に帰らねばならなかった。アイドルの終わり。真野ちゃんも現実に帰る時が来た。僕らにとって、現実世界は地獄かもしれない。それを救ってくれたのが幻想世界の真野ちゃんだったのだ。
しかし、疲れ切った真野ちゃんがもう家に帰る時が来たのならば、我々はそれを祝福し、sweet homeに導かなければならない。
真野ちゃんはまだ道を見つけていない。でもきっとそれはある。帰るべき家を見つけるまで、真野ちゃんは頑張るだろうし、我々もその孤独な戦いを支えていくのだろう。


真野ちゃん引退コンサートのラスト曲、「お家に帰ろう」。長く優等生アイドルとして地道に活動を続け、ファンとともに成長した真野恵里菜がついにアイドル界を去り家に帰る時が来た。英語歌詞を感情豊かに見事に歌い上げる真野ちゃんの姿に会場のマノフレは涙に包まれたという・・・そんな光景が目に浮かぶ。
2番がダメダメ?そりゃそうだ。だってまだ真野ちゃんは発展途上だもの。きっとこの英語詞を感情豊かに歌えるようになったとき、きっと真野ちゃんは帰る家を見つけるのでしょう。その日まで頑張れ真野ちゃん、そしてマノフレ。僕はこれからも少し離れたところから真野恵里菜の活躍を見守っていきたいと思います。

*1:ustで某有名マネージャーによく怒っていますよね