2010ハロー!プロジェクト新人公演9月〜横浜STEP!〜 変わらぬもの、変わるもの/ひらっちはそこにいた

さて迎えた新人公演。次回11月の公演で「新人公演は最後」だということは告知されている。残り2回。エッグの運命は。先行予約が無い青封筒、9月6日発送で何かしらの「サプライズ」があるとの予告。9期オーデ。ハロヲタは出口の見えない疑心暗鬼に陥り、9月5日の新人公演で何かしらの(おそらくネガティブな意味での)重大発表があるのではないかと囁かれていた。


灼熱の横浜BRITZ。不安が渦巻く中集まった観客。そして始まる、昼公演。


何もかもが「いつもの」新人公演だった。
今回はライブは縮小され、企画コーナーがメインであることも予め発表されていた。どうせつまらないいつもの企画なのだろう。予想は的中、むしろ的中しすぎた。エッグなんでもベスト3、お絵かきしりとりリレー、クイズ・ハロサゴン。全て過去にやったことのある企画。こんなご時世にわざわざ新人公演に訪れる、エッグに対し一定の知識を持ち合わせたファンにしか楽しむことはできないだろう。
企画コーナーが終わりメンバーが着替のために一旦去り、ステージにはシャ乱Qまこと一人が残される。告知。いよいよか。観客に緊張が走る。
しかし、まことが読み上げるのは全て既出のエッグメンバー出演舞台情報。そして11月ラストの新人公演。告知は終わった。何もなかった。
観客の安堵が不安に変わる前に、ミニライブが始まる。
さあ!恋人になろう・浮気なハニーパイ・I know・友情 純情 oh 青春・ALL FOR ONE & ONE FOR ALL ! これも全て過去に歌ったエッグではおなじみにナンバーである。
あっけなく昼公演は終わった。正味70分。本当に何もなかった。何もかもがいつもの新人公演だった。それはまるで終りなき部活空間。平穏で楽しく幸せな、歳の異なる少女たちの空間。また同じような夜公演があり、11月にはあたりまえのように次の新人公演が予定されている。いつまでもこの平和で閉鎖的な空間は続いていく。そんな気さえする。でも、はっきりしているのは終焉(終演)は11月に確実に待っているということ。
変わらないようで、成長している少女たち。彼女たちの個々の時間は確実に流れているのだが、エッグ新人公演という空間全体の時間は停滞している。何より停滞しているのは僕たちファンかもしれない。11月も、来年もエッグたちが僕たちに向かって手を振りパフォーマンスを発揮してくれると半ば信じこみながら、今この瞬間の少女たちの輝きを享受する。11月で最後と分かっていつつも、それをまるで感じさせないこの空間。切断の日が訪れるその瞬間まで、僕たちは新人公演という空間が何時までも続くと心のどこかで期待しているのだろう。期待と不安。不安をかき消すために、いっそう僕たちは目の前の少女たちの輝きに没頭するしかない。


平野智美。昼公演のひらっちもまた、いつものひらっちだった。
クイズ・ハロサゴンで緑組の先頭回答者となったひらっち。いまこそ院生として、ちびっこ少女たちと格の違いを見せつける時が来た。誰もがそう思っていたに違いない。
だが、ひらっちがそんなヲタの期待に素直に答えると思ったら大間違いである。2010ワールドカップ優勝国・三角形の内角の和・円周率を表す記号・7月の選挙・・・ひらっちはボタンを押さない。高校生メンバーに正答を持って行かれる。ひらっち?どうしたひらっち?観客がざわめく。7月の選挙に関して「衆議院選挙」と他チームから誤答が溢れる。あとはもう一つを答えるだけ。ここまできてひらっちはやっとボタンを押した。そして自信なさげに「参議院選挙・・・?」と回答した。もちろん正解だ。
この日一番の俊敏な動きで、ひらっちは逃げるように正答者席へ走る。席に座り、胸に手をあてて安堵するひらっち。どうしてひらっちはステージの上にいるのだろうか。彼女の中に「見せ場」という概念は存在しないのだろうか。そもそもひらっちは院生なのか。というかやっぱりひらっちは罰ゲームでアイドルをやっているのだろうか。なにもかもがわからない。院生という唯一の拠り所まで放棄せんとするひらっち。いつものように高速で瞬きをしたまま、企画コーナーが終わるまでまたしても無表情だった。

全員曲が始まって、僕は最前ブロック下手2列からひらっちを探した。どうせひらっちのことだ、下手最後列に来るだろう。その予想は外れた。ひらっちの姿が見つからない。上手を見る。しかし見つからない。焦りを感じた。ひらっち、ついにステージから消えた・・・?1番が終わりかけポジションチェンジが行われたとき、やっと小夏と完全に被って隠れていたひらっちを捕捉することが出来た。ひらっちはごてっとした長袖長ズボンの衣装を身に纏い、自慢の真っ白な肌を全て隠していた。ひらっちから院生という記号と美白を奪ったら何が残るのだろう。友情純情oh青春でどこかぎこちないステップを踏みながら頑張って踊るひらっちは汗だくだった。あんな衣装だ、当たり前である。前髪が額に張り付き、ひらっちはまるで幽霊のようだった。



不安と希望。停滞と成長。どこかポジティブな面が見えない昼公演が終わり、夜公演が始まった。

夜公演もひらっちはひらっちのままなのか。僕は上手に移り、企画コーナーでひらっちが上手最前方に来るタイミングに備えた。
ひらっちはまたしても期待を裏切った。・・・今度は良い方に。
クイズ・ハロサゴン。今度は見事に三星でレストランの格付けを行うガイドブック→ミシュランを1番手で抜けたひらっち。ヲタの歓声にうれしそうなひらっち。ひさびさの笑顔が眩しい。今度はゆっくりと、そして堂々と誰もいない正答者席に座った。2抜けで移動してきた小夏とも、珍しく会話している。その後全員が終わるまではおなじみの瞬き地蔵に変身してしまったのはお愛嬌か。
「早いもの」がお題のお絵かきクイズ。可愛らしい動物の顔を書くひらっち。絵はひらっちの得意分野だ。きっとチーターなのだろう。制限時間が過ぎ、ひらっちの絵を説明する番がやってきた。
「これは新宿のねずみです」「深夜になるといるんですよ。すごく早いです」
まさかのねずみ。新宿のねずみ。わかるよ、僕たちはそのねずみを知っている。会場の空気を全部持っていったひらっち。その答えは中学生には出せない。まさかこのタイミングでそういう攻め方をするとは思わなかった。ひらっちのポテンシャルがまったくもってわからない。
まことも相当この解答がお気に入ったのか、その後のひらっちの新宿のねずみを「早さ(速さ)」の判断基準にしていた。あなどれないひらっち。僕はもうお腹いっぱいだった。ドヤ顔を決めるひらっちに対し、全力で名前を叫んでみた。ひらっち!ひらっち!元々レスなんて期待してない。そもそも今までひらっちは観客なんて見てない、どこか虚空を見つめていたのだから。でもその時のひらっちはこっちを見た、ような気がした。
その瞬間、ひらっちはそこにいた。ステージ上で誇らしげに立っていた。歓声を浴びるひらっち。アイドル・平野智美は確かにそこにいた。



ひらっちに触発されたとまでは言わないが、2回目とあって空気を掴んだエッグメンバー。クイズの回答も1回目に比べて冴えているし、曲のパフォーマンスも段違いだった。会場中が一体となって、彼女たちを祝福していた。彼女たちは僕たちに愛されていることを思い出したのか、自信に溢れていた。そして僕たちもそんな彼女たちに全力で応えた。素晴らしい公演だった。



不安と希望。停滞と成長。夜公演でははっきりと希望・成長を感じた。11月に新人公演は終わる。その後どうなるのかは、今の時点では僕たちに知る由もない。けれど、彼女たちはこんなに素晴らしいステージを見せてくれる。終わらないはずの部活空間が終わりゆく中、彼女たちはきっとこれからも成長する。


新人公演という空間そのものが好きだ。その空間内でしか輝けないであろうメンバーも、その殻から飛び出してもやっていけるであろうメンバーもいる。いまは両者が絶妙なバランスを作り出している。メンバーみんなが好きだ。でも、ひらっち以外にどうしても個別に名前を挙げなければならない少女が数人いる。


工藤遥。見るたびに恐ろしさを感じる。タケちゃんこと竹内朱莉・カリン様こと宮本佳林を完全に喰う勢いだ。技術はまだまだかもしれないが、この子が口を開いた瞬間、僕はいつも苦笑してしまう。彼女がしゃべる様はとにかく異様だ。説明できないが、笑うしか無いのだ。ステージ上で踊っている姿が眼に入ればいつのまにかこの子の姿を追ってしまう。

吉川友。僕のような新参ヲタが彼女に対してコメントするのはもはや失礼かもしれない。彼女はエッグの中で別次元に居る。ビジュアル・歌唱力はもとより、視線の配り方・ひな壇での振る舞いなど、既に完成されたどこに出しても通用するアイドルだと思う。今こそ羽ばたいて欲しい。

譜久村聖。エロい、エロいと言い続けてきたが、冗談ではなくなってきた。もう見てはいけないものを見ているのではないかという気にさえなる。みずき!みずき!と叫ぶヲタの声は恐ろしいスピードで大きさを増し、オカルト的な新興宗教のようなパワー、惹きつける力を感じる。中学二年生とは思えない雰囲気に、僕たちは唾を飲む。大胆に露出したお腹は、「団地妻」と呼ばれる雰囲気を持った顔に似合わず、どこかぷっくりとした幼児体型。そのキメラ的なギャップが恐ろしいエロスを生み出している。
ヲタはそのエロスに気づいている。衣装や企画コーナーの様子から、もちろんスタッフも気づいているだろう。ただ本人だけがその魅力に気づいていない。そこが唯一の救いであり、譜久村聖のバランスを支えている。だって「聖」と書いて「みずき」だもの。そんな名前を授けられたまだまだあどけない彼女の内面が、ダークサイドに落ちそうになるぎりぎりのところでどうにか踏みとどまることを可能にしているのだ。


一人一人上げていくと本当にきりがない。個々の素晴らしさ、エッグ全体としての素晴らしさ。
ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!。この歌をエッグが歌わないで誰が歌う。
慌てずに先へ急ごう。切り開くのさ。誰かがするのを待たずに。EVERYBODY GO! まだ間に合うぜ。さあ乗り込め。世界はALL FOR ONE & ONE FOR ALL!



平和で楽しい、終りなき部活空間もじきに終わる。でもきっと、その先に彼女たちの未来は残されているに違いない。



追記:グッズ買わなかったから気づかなかったけど、どうやらメッセージ入り生写真に衝撃のひらっち双子告白があったらしい。ひらっちどこまでネタキャラなんだ・・・絶対入れ替わってる、公演中に入れ替わってるよ・・・ひらっちあんたすごいよ・・・ ほんのちょっとつかまえたと思ったのに、一瞬で雲の向こうへ行ってしまった。ぼくはまだまだひらっちの幻影を追っているだけなのかもしれない。