TDF ツール・ド・フランス2010 第3ステージ

かねてより今年のツールにおいて注目を浴びていた第3ステージ。パリ〜ルーベの一部ステージを逆走し、パヴェを走る難コース。結果、予想以上の波乱が待っていた・・・

序盤から積極的にレースを引っ張り、パヴェの入り口ではしっかりと先頭をキープするサクソバンク。相変わらずフォイクトの献身っぷりが光る。
第2セグメントのパヴェを抜けた直後、何も無いところ*1で植垣に刺さるクネゴ
3セグメントで落車発生。ルクセンブルクチャンピオンジャージに身を包むのは、優勝候補のアンディ・シュレク・・・ではなく、つい先日弟からジャージを奪取した兄、フランクシュレク。鎖骨を骨折し、第3ステージにしてツールを離れることとなった。これをきっかけに分断する集団、前方にはカンチェラーラとアンディが。
カンチェの鬼牽きで、一時は10秒少々までに迫ったコンタドール集団を、パヴェで一気に50秒差まで離す。
アンディはいつまでもフランクを待っていないで、独り立ちすることが求められていたが、このように「自身の総合優勝のために落車した兄を見捨てる」という形で兄離れが成し遂げられるとは。。これがアンディが本当に強い選手となるために大きく羽ばたくきっかけとなるのかもしれない。

集団が分断された後、アンディとコンタドールの間で走っていたランス・アームストロング。しかし、後半のパヴェでパンク、ポポビッチを一人連れて1分先行されたコンタドールを追うことになった。いよいよ消耗したポポビッチ切離し、一人で、そう、たった一人で先頭を追うランス。こんなランスの姿を見たことがあっただろうか。感情を剥き出しにして全力で、一人で先を追うランスに、思わず身震いがした。

幸運にもウィギンス・メンショフといった他チームのエースが集まる集団でアンディを追うことになったコンタドール。唯一実力のあるアシスト、ヴィノクロフも連れて、みるみるうちに差を詰める。が、相手はあのカンチェラーラ。パヴェでタイムを失い、ゴール間際では50秒差に。そして事件が。ゴール前、集団の先頭を牽くのはヴィノクロフ。しかし、その後ろにコンタドールはいない・・・。千切れ、惨めな姿でゴールし、思わず腿を叩き感情を顕にするコンタドールヴィノクロフはおそらくコンタドールが千切れたことに気がつかなかったのだろうが、その姿は、まるで昨年のチームメイトのランスに裏切られた姿を再現しているようで、だれもがアスタナの不安な影をみたことだろう。

昨日の逃げが幸運にもステージ勝利・マイヨジョーヌにつながったシャバネル。しかし、パヴェで2度もパンクし、その黄金のジャージも1日でカンチェラーラに返上することになるといったい誰が予想しただろうか。
第3ステージに向けて、シャバネルのコメント。
「(石畳に)不満を言っている人々が理解できないよ。3週間に及ぶツールで王者となりたい選手は、平坦、山岳、石畳とどんなコースでもトップの座を守らないといけない。それを成し遂げるのが偉大な選手だ」
http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=14906
自身は未だに「偉大な選手」には届かないというのか。残酷である。


スポーツ選手とアイドルの近似性はしばしば指摘される。
僕はプロロードレース選手のtwitterの発言を見るのが好きだ。レース直後の、生々しい声がリアルタイムで飛び込んでくる。



スポーツには「ドラマ」が求められている。ツール・ド・フランスはそのドラマを求めるあまり、アルプス・ピレネーを登るというとてつもない苦しみを選手に与える。
今回のパヴェは、主催者がツールを盛り上げるために、何か「事件」を求めて設置したものである。その結果は、想像以上に大きな効果を生んだ。
選手を手のひらで踊らせ、よりスリリングな展開を求める主催者・あるいは視聴者自身に「反省」は必要なのか。それとも、それでもツールに対して全力を尽くし、そしてドラマを生む「主役」である選手にただ感動を覚えるのか。


なにはともあれ、選手に最大の賞賛を贈りたい。今年のツールは始まったばかりである!

*1:一応狭いといえば狭かったけれど・・・クネゴ師匠にはこの程度の障害があれば十分遅れてくれる!