文学フリマ/アイドル指向/同一化の欲望

突然ですが、第十回文学フリマにて、id:onoyaさん主宰のアイドル論同人誌に文章を載せてもらうことになりました。

http://d.hatena.ne.jp/musumelounge/20100509

5月23日(日)の文学フリマにて同人誌の新刊を発行いたします。

『アイドル領域2010春増刊号』(全60頁、頒布予定価格:500円)

(編集:斧屋 onoyax@yahoo.co.jp)

なかなか面白く仕上がったのではないかと思います。

細かな紹介は追々するとして、概要は以下の通りです。



第十回文学フリマ

日時:5月23日(日)11:00〜16:00

場所:大田区産業プラザPiO

サークル:「ムスメラウンジ」

ブース:V-06

文フリサイト http://bunfree.net/

このようなブログでぶつぶつとつぶやいていただけの僕がいきなり同人誌かい!とビクビクおびえているのですが、主宰の斧屋さんをはじめとしたモーニング娘。学会の方々のアイドル論はとても刺激的で、特に昨年の冬コミで頒布された創刊号の出来栄えは素晴らしいと思います。創刊号の在庫もまだあるそうなので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。


今回僕はアイドルに対する「同一化の欲望」について書きました。
というのも、僕は田村ゆかりさんのファンだった声優ヲタ時代から、アイドル(声優)が好きであるということは、同一化の欲望ではないのかなと常々思っていたからです。
同一化の欲望を論じるにあたって、コミュニケーションと他者の問題に触れています。アイドルというのはまぎれもない人間であり、他者なのですが、その他者性は非常にあいまいです。特に同一化の対象としてみなされる場合、その他者性は極めて希薄なものとなっています。
また、近年はTV以外のメディア、あるいは握手会等によって直接、アイドルとコミュニケーションを行うことが用意になりました。そのような状況はアイドルの他者性に影響を与える要因となっているでしょう。


個人的には、僕はアイドルとのコミュニケーションが苦手で、握手会は特にダメです。1回だけ嗣永桃子写真集発売の際に行った事があるのですけど、やっぱり何かダメでした。桃子はとても可愛らしかったですけど。
田村ゆかりさんのファンクラブに加入していたときも、ファンとの距離が近いファンクラブイベントはあまり楽しめませんでした。メディア上のコミュニケーションを考えても、ブログは苦手で、ラジオの距離感がとても心地よいと感じます。これは端的に僕の個人的なアイドルの捉え方の問題ですが、同一化の欲望と関連する部分が大きいのかな、と思っています。
上手く説明できないのですが、声優さんのことをキャラクターに対して「中の人」と表現しますよね?アイドルにも同じことが言えそうで、人によって程度は異なるけれども、アイドルはアイドルという殻を被って、「中の人」が存在する。別にこれはアイドルじゃなくてわれわれ一般の人間でもそうですよね。ペルソナと呼ばれるものです。別に明確な「本当の私」が存在するとまでは思っていませんが、アイドルファンは、二つのアイドルの姿-キャラクターと中の人-の関係性の中でアイドルを好きになっていると思うのです。これを現実-虚構という二項対立で捉えるのは厳密には上手くいかないと思うのですが、これに関することを同人誌『アイドル領域』の創刊号で斧屋さんが非常に面白い考察をしています。
僕が関心を持っている「同一化」の欲望も、この二面性に即する形で働いているのかな、と思っています。詳しくは同人誌で。




話は変わりますが、5月7日に日本テレビ系列で放送された、AKBファンを特集したテレビ番組がありました。
参考URL:http://blog.livedoor.jp/insidears/archives/52309870.html

この番組の趣旨は一番すごいAKBファンを探して回るというものでしたが、数々のツワモノを経て最終的に「あんたが一番!」と紹介されたのは、AKBになりたくて性転換した(ニューハーフになった)男性でした。
これを見て僕はとても納得しました。あぁ、やはりここに行き着くんだろうなと。奇しくもこのようなタイミングで、「アイドルへの同一化の欲望」のラディカルな例が紹介されるとは。
「きめぇwww」の一言で片付けることは簡単ですが、アイドルが好きだということはなんなのか、そもそも他人を愛するということはなんなのか、「好き」とセクシュアリティ、異なる価値観の持ち主と共存すること、などなど、彼(彼女)の紹介からは様々なことを考えさせられました。


実は彼(彼女)とは、直接の知り合いではないものの、高校時代から噂には聞いていたちょっとした有名人でした。だから「AKB48が好き過ぎて性転換した」というのはおそらく誤りで、AKBはきっかけに過ぎないとは思うのですが、それにしても潔い生き方をしているなぁと感心してしまいました。彼(彼女)は以前にも数回TV出演しているので、もともと目立ちたい・人に見られたいという思いの強い人だったのでしょう。まさに人に見られる存在であるアイドルに同一化の欲望を抱くのも、必然のことだったのでしょうか。


今回同人誌に寄せた文章ではセクシュアリティについて述べることは意識的に避けたのですが、アイドルとセクシュアリティは切り離せない問題です。いつかこのテーマに対して一定の考えがまとまって、あわよくば文章の形に残せるといいな、などと思いました。


普段とは違う文体でしたが、この辺りで。稚拙な文章ですが、『アイドル領域2010春増刊号』を宜しくお願いします。