Berryz工房 コンサートツアー 2010初夏 〜海の家 雄叫びハウス〜


嗣永桃子は大学生になっていた。
4月に入っても、桃子はただの18歳の女の子だった。そして4月29日、僕にとっての桃子は突然大学生になった。
大学生。自分と同じ大学生。桃子が同じキャンパスにいる。そんな想像はとてもではないが無理だった。
アイドルは自分と同じだけ年をとる。そんなことはわかっている。
桃子は大学生になった。同じこの世界だけど、どこか遠いところにいる。そんな桃子は僕のテリトリーに一歩近づいてきた。そんな桃子がとても怖かった。
大学生になって、桃子はアイドル以外に、自分のやりたい事を達成するべく勉強するようだ。
桃子は幼稚園か小学校の先生になりたいそうだ。僕の想像の中でも桃子の将来像にぴったりだった。でもそれが逆に怖かった。
漠然と、桃子は20歳を過ぎたらすぐにアイドルをやめて僕らの前から消えてしまいそうだと以前から感じていた。この想像もあたってしまうのだろうか。


そんなことを考えながら、ベリコン初日に行ってきた。1階6列目中央。良席である。
新アルバムがどうしようもなかったので、正直あまり期待していなかった。良席だったし、桃子だけ見ていようと思った。

今回のツアーでは、マジグッドチャンスサマーだけは外さずに入れてくるだろうと思っていた。CDイベ等には行かないので、MGCSは生で聞いたことが無かった。

意外にも寸劇から始まり、がっかりした。劇ならゲキハロかファンクラブイベントでやって欲しかった。そしたら僕はたぶん見に行かないから。
数ある公演を、ひたすら同じ(多少は途中のネタを変えてくるとしても)劇を見るのは辛い。作られた誤配を楽しめというのか。「大変だ!美勇伝が解散した!」ここで笑いなさい、ということなのか。でも皆優しいから笑う。次回のネタはなんだろう、と期待する。でもそれはコンサートで期待することなのだろうか。


寸劇はまぁさだけが演技のセンスを感じさせ、桃子の出番は一瞬で、梨沙子が中央に残り、まさかの梨沙子ソロから??と会場がどよめく中、マジグッドチャンスサマーのイントロが始まった。「あ、お母さん?あのね・・・?」

MGCSは本当に楽しかった。続くライバルも多少飽きを感じさせるも、悪くない。そして恋の呪縛へ。久々に聞いた気がして、気分は最高潮だった。しかし、コンサートのピークがまさかここで訪れるとは思っていなかった。

続くアルバム曲、唯一いい曲だと思った熊井ちゃんとまぁさの「グランドでも廊下でも目立つ君」は、もともと歌唱力の無い二人にいい感じでエフェクトがかかって絶妙なバランスが成立している曲なので、ライブの生歌だとどうかなと心配していたけれどとても良かった。一昔前の、妙に完成度の高いアニメのOPを見ているようだった。


そして二回目のMC、と思ったらスクリーンに「15分間の劇を座ってお楽しみ下さい」との文字が。
はっきりって寸劇は感想も書きたくないくらい最悪だった。そして夏わかめマジ夏すぎる、夏remember you、の夏の定番名曲が消化不良のまま消費された。別にすべての曲で立って騒ぎたいわけじゃない。夏remember youは座っていても良かったと思う。でも、感動はもちろんネタだと笑うことも許されないベッタベタの劇の後にあの名曲を聞かされ、どういう気分で聞けばいいのかまったく心の整理がつかないまま曲が終わってしまった。


後ははっきりいってほとんど記憶にない。メドレーで隠れ名曲・懐かしの曲をがっと流していたが、メンバーは半々で桃子の出番は少ないし、個人的に大好きな夢でドゥーアップは桃子は歌わないし。モンキーダンスで出てきた桃子は、前回の鯛コスで味を占めたのか、誰もが望んでいないよくわからないボテッとした着ぐるみでの登場だった。

ラストのイナズマイレブン曲3連発+友情純情はもはや「やらされてる感」しか感じられず、アンコール開けはハロコン+新人公演でさんざん聞かされたピリリ、しかもショートバージョン。抱きしめて抱きしめても、君の友だちも歌わず、ByeByeまたねで終了の手抜きっぷり。それ何回目??



アイドルが女優と違うのは、演技をしなくても、そこにいるだけで何かを感じさせることができるかどうか。
「演技していますよ」というスイッチが入っていないところで常にアイドルを演技し続けるか、生まれ持った圧倒的なアイドルとしての才能、そこにいるだけで発せられるオーラを持っていることが必要。
嗣永桃子は、後者の才能もあるけど、どちらかというと前者のタイプ。だから桃子に寸劇を演じさせても、あまり面白くない。

僕は嗣永桃子を見に行く時は、イベント等はなるべく避けて、ライブだけ見に行くようにしている。
ライブでの桃子は変幻自在で、甘い声はもちろん、最近はBuono!でよく見られるように低い声も出せるようになった。7人で踊っていても、ダントツで上手いキャプよりも、背の高い熊井ちゃんよりも、不思議な踊りの千奈美よりも、平均的な雅よりも、桃子は圧倒的に目立つ。
そして桃子はライブでしか見せない顔を持っている。ふっとした瞬間、真剣なまなざしをおくる瞬間がある。とても凛々しくて、どこか冷たさすら感じさせて、しびれそうになる。桃子はBuono!コンではよくこの表情をみせている。だから僕はBuono!コンが好きだ。僕はこの瞬間が見たくてライブに行っているのだと思う。今回のライブでこの表情が見れたのは、昔の定番曲、恋の呪縛だけだった。

桃子は普段は笑っていないのではないか。僕は桃子を知ってから割と早い段階でなんとなくそう思っていた。今でもそう思っている。前回のコンサートで、メンバーの昔の写真を披露していた際、幼い桃子は写真の中でほとんど笑っていなかった。やっぱり、と思った。もちろんこれは僕の妄想なので、きっと桃子は普通に笑って日常を過ごしているのだろうけれど。


寸劇とMCで、桃子は「出番が無いキャラ」「おばあちゃんキャラ」あるいは「ウザイキャラ」として扱われていた。
Berryz工房の特徴として、長年同じメンバーで活動してきただけあって、各メンバーが割と自然(自然とという言葉はとても怪しいけれど)とキャラ立ちしているという点が僕はとても気に入っていた。
しかし寸劇では全員にくだらない設定のキャラ付けがなされていてどうしようもなかったし*1、MCでも桃子と桃子に絡んだまぁさは必要以上に桃子の「キャラ」を意識していた。僕にはそれがとても痛々しかった。皆「お約束」を期待しているのはわかるが、あくまでもそれは自然発生する(ように演出された、でもかまわない)お約束である。


とにかく、桃子がとても遠くに感じられて仕方が無かった。出番も少なかったし。折角7人いるのに。


ライブでしか味わえないアイドルの身体性の露出を完全に拒否し、これができるのはベリだけ!と言わせたい気満々の着ぐるみに対して、一回目はまだしも、2連続で、しかも鯛から確実に劣化したどうしようもない着ぐるみに対して、それでもベリヲタは「ベリにしか出来ない!」と喜ばなくてはいけないのだろうか。試されているのではなく、舐められている。僕は完全にそう思ってしらけてしまった。
着ぐるみだけではない。もう3回もやっていてまったく盛り上がらないボイパも。イナズマイレブン関連のCDの方向性もそう。


「これができるのはベリだけ!」

でも本当にそれでいいの?

*1:べつに熊井ちゃんに天然キャラを演じさせなくても、ちょっとフリートークをさせてあげればファンのツボを抑えたマジレッサーっぷりを発揮してくれるものなのだ