初音ミク出馬せよ、について

濱野智史氏がweb学会で提唱した初音ミク(仮想キャラクター)による代議制民主主義について討論してみた。

簡単なキャラクター民主主義の説明を行うと、キャラクターに対して匿名の政策秘書が集まり、ニコ動のタグの仕組みを利用して政策を制作し、意見が対立した場合にはキャラそのものがfork(分岐・派生)していき(N次創作)、逆にキャラクターの設定が政策にフィードバックされることもある、という政治家のヴァーチャル化である。
web学会で述べられた利点として、1:匿名のまま政治参加が可能 2:あらゆるところに偏在できるので公人として性能が高い 3:現在の代議制にそのまま適用可能である といった点があげられ、欠点としてはそもそもヴァーチャルなので国会に参加出来ず、代行人を立てる必要がある などといった点が指摘されていた。

もちろん濱野氏も突っ込みどころは無数にあることを前提でこの論をぶちあげたに違いないのだが、せっかくなので真剣に討論してみた。

彼女(討論相手)は全面的にキャラクター民主主義に反対であり、論点を要約すると、「政治家が人間でなければ代議制を存続させる意味がない」ということだった。
投票コストなどの技術的問題を棚上げするという前提であるならば、投票先が「人」でないなら政策そのものに票を投じればよいのであり、ネット投票による直接民主制で事足りる。とくにキャラクターが分岐・派生する必要性が感じられない。政策の選択肢を増やせばよいと彼女は批判する。


それに対し僕は、仮想人格は個々の意思を集約するシステムとして優秀であり、圧力団体や政党の働きを効率化したもので、政治家による政策決定政策議論以外のコスト(端的に言うと選挙対策コスト)を劇的に減少させ、献金等の不正も解消できるのではないかと反論した。さらに現在の投票システムにおいて「よくわからないけど◯◯さんに任せておけば大丈夫そうだ」「◯○さんはイメージが良い/クリーンだ/アツい/カッコいい/美人なので投票します^^」といった投票行動においても、前者であればまさに「2次元は裏切らない」の如くヴァーチャル政治家は様々なしがらみ(政党助成金と公認の問題とか)に屈することなく己が主張する政策を実現するために忠実に国会で票を投じるのであり、後者の場合はキャラクターのイメージが政策と連動している(例えばおばあちゃんっ子=高齢者問題に積極的、など)ためキャラクターから政策へのフィードバック要素が非常に生きてくる。


ここで彼女と僕の間で、このキャラクター民主主義において、主権者の理性・判断能力がどの程度確保されている前提なのかという点で齟齬があったことが発覚し、微妙にグダって議論は終了してしまった。彼女的には、個々の主権者が合理的な判断能力をもち意思を投票行動で示せるのならば仮想人格はいらんよ直接民主制でいいよ、ということだったのだろうか。僕は直接民主制に置き換えてみても、「選択肢」を主権者の意思で作り出せることにキャラクター民主主義の意義があるのではないかと思ったのだが、どうだろうか。


ちなみにあずまんこと東浩紀氏は同じくweb学会において「中間団体とか議論とかいらねーよネット投票直接民主主義もナンセンスだし。つまるところ家でニートたちが興味があって詳しい分野に対してゴロゴロ寝ながらつぶやいた意見が自動的に淘汰・調整されるシステム作ればいいんだよ→それがルソーを現代風に読み替えた一般意思2.0でこれ利用すれば新たな民主主義つくれるんじゃね?」(twitterの発言・朝生出演時の発言・web学会の発表を丁寧に読み返して簡単にまとめたのだが難しいのでもしかしたら間違っているかもしれない)とかなりハイレベルなことを仰っていて非常に面白かったのだが、現在の政治システムにフィードバックするには少々難しいかもなあ。でも積極的に考えてみたい。


本当は初音ミクの身体性・アイドル性、ミクおける声の絶対的要素、アイドルと声、声優アイドルとは、などを絡めて論じようと思ったのにコレだよ!
というわけで上記のテーマは近いうちにいつか。
ちなみに僕はミクが苦手です。端的にあの「声」が。