日本に帰ってきて1年以上たって、自分が海外にいたことが夢だったかのようにほぼ忘れてしまいかけている忙しい日々の中で、なんとも幸運なことに好きなアイドルグループのライブに毎週のように通っている。
そんな好きなアイドルグループ、コロナ真っ最中に初めて見たときは小6~中1だったメンバーも、5年がたち今では高校生が中心。初期メンバー(活動最初期はいろいろ経緯はあるけれど自分との出会いの中では初期メンなので便宜的に初期メンと呼ぶ)の数は当時の5人から3人に減ってしばらく安定して活動していたけれど、去年1人卒業して2人になり、さすがに継続活動は厳しいかな・・・と思っていたところに新メンバーを4人追加してからちょうど1年。11/23に今までの活動の集大成となるアルバムが発売された。
まず、2025年にもなって、サブスクではなく1枚の「アルバム」の発売を楽しみにして数か月を過ごすことの幸せをすでに数か月かみしめながら日々を過ごしていた。そしてついに発売日が訪れ、ようやく物理的なgoodsとしてのアルバムを手に入れた。今日はリリイベを2本回す間に仕事関係の用事もこなしつつ、家に帰って夕食を食べてお風呂に入って、アルバムの透明なビニールの封を開け、歌詞カードを眺め、慎重にCDを盤から取り出し、めっきり使わなくなって押し入れにしまってあったCDドライブを引っ張り出してきてノートPCに接続して、iTunesでインポートして、発売日当日だからかインディーズ流通だからなのか楽曲情報も自動インポートできず歌詞カードを見ながら手動で曲名を登録し、もはや何の意味があるのか全く分からないがおまじないのように昔と同じく320kbpsでインポートして「温かみのある」mp3、否、aacファイルを生成し、結局Apple Musicにアップロードして、真っ暗な部屋でベッドに寝て、いつも「楽だから」という理由でつかっている骨伝導イヤホンではなく数年前に買った普段全く使わない有線のちょっといい値段のイヤホンをつけて目を閉じた。煩雑な作業やアイテム、いやもはや「儀式」のすべてが懐かしく、回り道に回り道を重ねて、そしてようやくアルバムを頭から通して聴いた。
自分は音楽を語る資格も知識もまったくないのだが、このアルバムが音楽的に名盤かというと客観的には多分そうではないと思う。メンバーの歌がうまいわけでも、音楽性が特別優れているわけでもおそらくない。でも、全編通して聴いたそのアルバムは、彼女たちの歴史と、彼女たちのスタイルや矜持、そして「今」の彼女たちの魅力を改めて強く感じることができて、本当に素晴らしいアルバムだなと思った。
自分はこのアイドルグループのなにが、どこが好きなのか。このブログでは常々言い訳がましく「要素には分解できない」と書いているような気がするが、いろいろ理由がある中で、その一つに、アイドルグループとしてやりたいことがはっきりしていて、明確な「スタイル」があることや、筋が通っていることに非常に好感度が持てるなといつも感じさせられていた。いい意味でも悪い意味でも時代に媚びていないこと。「コンセプト」というとアイドルの表層的な手触りの野暮ったさが出て一気に凡庸になってしまうので、勝手に「スタイル」という言葉を使いたいけれど、それがアルバム全編を通してまたしても伝わってきて素晴らしかった。
アルバムの一曲目は「魅惑のルレロラ」。なんというか、とにかく難解。なにか特定の音楽的なジャンルはあるのかもしれないが、自分のような音楽素人には形容できない。特徴的なギターのリフが一曲を通じて繰り返され、とにかく変拍子で、ライブでは、たとえシンプルな四つ打ちであってもリズムに合わせて叫ぶことすらできないリズム感皆無のヲタクたちに手拍子すら満足に許さない。ライブ現場と違って雑音のない世界で改めて聞くと、序盤の音の少なさから後半につれてライブでは聞き逃してしまう音が徐々に重なっていく曲の構成に身体が包まれていく。大事な一曲目にこんな特殊な曲を持ってくる勇気はすごいなと一瞬思うけれど、別に初見の人はアルバムを頭から順番に聞く人はそもそもいないので「好きな人だけ聞いてください、ついてきて」というスタンスは確かに正しいのか、と思うとなんだか聞いているこっちも気合が入ってうれしい。
浮遊感があるというか、浮いているようで落ちていくこの曲を聴きながら、希死念慮を一度も感じたことがなく300年生きたいタイプだけど死ぬならこの曲を聴きながらスカイダイビングで着地失敗して死にたいと思う曲が人生で数曲あって、その中の1曲に仲間入り。
2曲目は表題曲の「すきですきですきだから」。アルバム発売と同時にMVも公開されているアルバムタイトルチューンであり、実質的な「今」の彼女たちの代表曲、顔となる曲。自分はハロヲタなので、語彙が少ないが端的にハロプロっぽいなと思う。マイナー調でアップテンポだけど歌詞がやたら辛気臭くて、好きな男に執着してしまうめんどくさいオンナの曲。現存の初期メンバーの2人が全体の2/3以上の歌割を占めており、MVに映るのもほぼその二人だけで、後輩の新メンバーたち4人は、ちらちらと横顔がうつる程度。正直、かなりシビアな歌割だなと思う反面、この2人がグループの「顔」ですよ、という意思表示でもあるので、本当に「勝負曲」なんだなと思わせてくれる。メンバーが小学生だった時代からずっと「きれいなお姉さんになります」がキャッチコピーだけれども、きれいになりきれていない、辛気臭さがハロヲタにまんまと刺さる曲になっていて、正直好き。
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ところで、彼女たちのこれまでのシングルは、表題曲A面(という言い方が完全な死語)はマイナー調・アップテンポ・大人びた歌詞で、反面カップリングB面は「むつかしい」曲。歴代シングルでは表題曲とカップリングはそれぞれ作曲編曲チームが一緒で、この2チームの作曲陣の組み合わせで統一されている。最初の2曲から先は、シングルの発売順を逆にたどるように、つまり歴史をさかのぼるように、各シングルから2曲ずつ並ぶ構成になっている。改めてさかのぼって聞いていくと、表題曲・カップリングの一貫性がここちよい。メンバーの歌声はどんどん若くなっていき、3人時代から5ー6人時代にさかのぼるとソロパートが減りユニゾンの割合が増えていく。いまの初期メン2人の歌声がソロパートが徐々になくなっていき彼女たちの印象がだんだん薄くなっていくのが、年月をさかのぼって自分の記憶がおぼろげになっていくのとリンクして、海外にいてほとんどライブを見られなかった「あの頃」を通過して、ついに最初に出会ったころのデビュー曲の時代にたどり着く。
デビューシングルに収録されている「放課後リップ」「わがままチーク」の2曲は、端的に言うと、小学生が大人びて化粧をする歌。かわいらしいですね、小学生ですね、と言ってしまえばそれまでなのだが、今日のリリイベには昨年卒業したOGメンバーも特別参加しており、高校生になった初期メン3人が久々に集まって楽しそうに歌う姿を見ると、時の流れも相まってとてつもなくぐっとくる。
デビュー曲までさかのぼり終えたら、ラストから数えて2曲目は、今回アルバム新曲の「flower」。自分はこれがアルバムの中で一番好きな曲で、表題曲の「すきですきですきだから」がアルバムの顔だとしたら、こちらの「flower」はアルバムの心だと思った。ポップでストレートなメロディに、相手を包み込んで肯定してくれる歌詞。歌割も、「すきですきですきだから」がほぼ初期メン2人しか歌割がないとの真逆で、Aメロ・Bメロともに順番に新メン4人のソロが入る。正直、アルバム全編を通じてこのラスト2曲が初めて新メンバーの個別の歌声が認識できたタイミングだった。
「わたしたち、きれいなお姉さんになります」。それが彼女たちの一応の「コンセプト」ではあるものの、ここにきてそのアルバムの一貫性を切り離している。小学生時代から長らくアイドル活動を続けて酸いも甘いも経験した初期メン2人が支えて新メンバー4人を追加した今の彼女たちの背伸びをしない素直で等身大の姿が一番似合う曲だと強く感じたし、もしかしたらもう活動休止かもしれないと(勝手に)思ったタイミングから新メンバーを4人入れてから1年間やってきて、今、この6人でこの歌を歌う意味を強く感じた。つらいこともあるけれど寄り添ってくれる、「これからも愛してね」とヲタク側に投げかけてくれる愛の歌。
ラストの「瞳のラブレター」は、最後の最後でまたぐっと歌い手の年齢が中学生くらいまで下がる、初恋の曲。たぶん彼女たちが毎週のように出ている小中学生アイドルメインの定例イベント用のユニット曲をアレンジした?という経緯があった気がするけれど、彼女たちも小学生ユニットから始まっていまや7年。高校生中心で、新メンバーの中に社会人がいても、でもポップに中学生の歌を歌える、「あえて」にならないまっすぐなメンバーの魅力にぴったりで、これもまた「わたしたちきれいなお姉さんになります」から離れた、今の彼女たちの等身大の魅力が詰まった一曲だと感じた。
「自分たちのやりたりスタイル」を貫く最新曲→そのスタイルに沿って時代をさかのぼる→最後にファンの自分が一番感じている彼女たちの等身大の魅力が詰まった曲という構成でアルバムを通して聴き終えて、2025年にこんな素晴らしい音楽体験ができてしばらく身体が動かなかった。
そして、彼女たちは、アルバム全編通して、一貫して「すき」を歌い続けている。これって今のアイドル界隈ではすごく珍しいことだと思う。今の流行からしたら、もっと聞き手の自己肯定感に寄り添うような、例えば「私可愛い」のスタイルのほうが同性にも受けるだろうし(悲しいかな、彼女たちには驚くほど女性ファンがいない)、もし自分がプロデューサーだったらビジネス上の判断として安易にそういう方向を模倣してしまうかもしれないし、自分がもし高校生のアイドルメンバーだったら正直そういう今風の歌を歌いたいと思う。そうでなくとも、いろんな方向で「好き(異性愛)」から離れたあらゆるコンセプトや、男女問わず若いヲタクに受けるフォーマットがあるはずなのに、彼女たちは一貫して「すき」を歌う。でも、そんなある意味時代錯誤的な「すき」を貫く強さが自分は好きだ。「すきですきですきだから」のひらがなのアルバム名があらわすものはしがみつくような重い愛や中学生の甘酸っぱい初恋に代表されるような「好き・異性愛」だけではなく、「flower」で歌うような、もっと広く愛や人間賛美に近い「すき」なのではないか。すべての作詞を手掛ける事務所の先輩ユニットであるJK21の初期メンでもある柊子さんがどう考えているかはわからないけれど、「アルバムタイトルチューンの曲名を当てようクイズ」で絶対に正解を出したいがためにここ数か月狂ったように「自分が好きなアイドルは何を歌うのか」を考え抜いた結果、自分はこのアルバムにそんな愛である「すき」を感じた。
自分もこのアイドルグループが「すき」でよかった、と心から思うアルバムだった。